条件式のある恒等式
今回は恒等式の問題の中でも、完全に任意の値をとるのではなく、一定の条件下で値が操作されるものを紹介します。
問題に出てくる文字の数が多く、初見でやる気をそいでくるタイプですが、条件式があるということは、文字の数を削ることができるということなのです。
何はともあれ、問題を一緒に見ていきましょう。
恒等式(問題)
\(2x+y-3z=3\) 、 \(3x+2y-z=2\) を満たすすべての実数 \(x\) 、 \(y\) 、 \(z\) に対して、 \(px^2+qy^2+rz^2=12\) が成立するような定数 \(p\) 、 \(q\) 、 \(r\) の値を求めよ。
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答案の例
\(2x+y-3z=3 \cdots ①\) 、 \(3x+2y-z=2 \cdots ②\) とすると、
①×\(2\) により、\(4x+2y-6z=6 \cdots ③\)
③ \(-\) ②より、 \(x-5z=4 \longrightarrow x=5z+4\)
次に、①×\(3\) 、②×\(2\) により、
\(\begin{cases} 6x+3y-9z=9 \cdots ④\\
6x+4y-2z=4 \cdots ⑤ \end{cases}\)
④ \(-\) ⑤より、 \(-y-7z=5 \longrightarrow y=-7z-5\)
これらを \(px^2+qy^2+rz^2=12\) に代入し、
\(p(5z+4)^2+q(-7z-5)^2+rz^2=12\)
\(p(25z^2+40z+16)+q(49z^2+70z+25)+rz^2=12\)
\(25pz^2+40pz+16p+49qz^2+70qz+25q+rz^2=12\)
\((25p+49q+r)z^2+(40p+70q)z+16p+25q=12\)
\(z\) についての恒等式により、
\(25p+49q+r=0 \cdots ⑥\) 、 \(40p+70q=0 \cdots ⑦\) 、 \(16p+25q=12 \cdots ⑧\)
⑦と⑧の連立方程式により、 \(p=7,q=-4\)
これらを⑥に代入することで、 \(r=21\)
解説
今回は、完全に任意の値を入れて良いわけではなく、一定の条件が与えられています。
問題を見ても分かるように、文字の数が多いので、条件式を使って、お題である「 \(px^2+qy^2+rz^2=12\) 」に出てくる文字の数を減らしましょう。
式が、 \(2x+y-3z=3\) 、 \(3x+2y-z=2\) の \(2\) 本しかないにもかかわらず、文字の数が \(3\) つあるため、完全に具体数で解を特定することはできません。
しかし、 \(1\) つ文字は残ってしまいますが、ある文字を含む形で解を求めることはできます。
残す文字はどれでもいのですが、今回は、 \(z\) を残す形で解を求めてみます。
\(x\) と \(y\) を変数として考え、連立方程式を立てると、以下のようになります。
\(\begin{cases} 2x+y=3+3z \\
3x+2y=2+z \end{cases}\)
上の式を \(2\) 倍し、式同士を引くことで、\(y\) を消去することができ、 \(x=5z+4\)
上を \(3\) 倍、下を \(2\) 倍し、式同士を引くことで、今度は \(x\) を消去することができ、 \(y=-7z-5\)
※もちろん、代入法で \(x\) を消去して \(y\) を求めることもできます。
さて、これらを「 \(px^2+qy^2+rz^2=12\) 」に代入すれば、 \(x\) と \(y\) を消去することができます。
その結果、
\(p(5z+4)^2+q(-7z-5)^2+rz^2=12\)
\(p(25z^2+40z+16)+q(49z^2+70z+25)+rz^2=12\)
\(25pz^2+40pz+16p+49qz^2+70qz+25q+rz^2=12\)
という式変形ができます。
\(z\) は「すべての実数」と言われているので、 \(z\) にどんな値を入れても、この等式が成立しなければなりません。
なんとなくお分かりのように、 \(z\) にはどんな値でも入れることができるため、等式を成り立たせないような \(z\) の値は必ず存在してしまいます。常に上記の等式が成り立つためには、 \(z\) の存在を消してしまうしか、手はありません。
ということで、 \(z\) に関する恒等式と見なして式変形を行い、
\((25p+49q+r)z^2+(40p+70q)z+16p+25q=12\)
という式を作り、 \(z^2\) と \(z\) の係数を \(0\) にすることで、 \(z\) を消しましょう。
よって、
\(25p+49q+r=0 \) 、 \(40p+70q=0 \)
そして、 \(z\) の含まれる項が消えた結果、残った式は、\(16p+25q=12\) なので、これが \(3\) 本目の式です。
あとはこれらの連立方程式を解けば、答えとなります。
\(3\) 本式があると、難しそうに見えますが、今回はラッキーなことに、 \(2\) 本目と \(3\) 本目には \(p\) と \(q\) しか含まれていないので、普通の連立方程式でこれらを求めることができます。
\(\begin{cases} 40p+70q=0 \\
16p+25q=12 \end{cases}\)
\(40p+70q=0 \) の両辺を \(10\) で割り、 \(4p+7q=0 \) とした後で、両辺を \(4\) 倍すれば、 \(16p+28q=0\) となりますね。
\(p\) を消去して、\(q=-4\) をまず出し、 \(q\) を代入して \(p=7\) を出しましょう。
あとはこれらを\(25p+49q+r=0 \)に代入すれば、\(r=21\)を得ることができます。
ある数 \(x\) は、すべての実数について成り立つ
\( \longrightarrow \) 基本的に、 \(x\) が残っていた場合、成り立たせるのは不可能
☆ \(x\) を消さなければ等式が成り立たないケースが必ず出てきてしまうため、 \(x\) に関する恒等式を作り、 \(x\) を含む項の係数を \(0\) にして、 \(x\) を消去する、という考えのもと、式を作る
おわりに
さいごまで読んでいただきありがとうございました!
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