必要条件と十分条件
今回は命題という分野について考えていきます。
この分野は、高校数学の中でもかなり混乱しやすい分野ですが、この記事を読めば、もう大丈夫です。
一つひとつ順を追って解説していきますので、一緒に見ていきましょう。
必要条件と十分条件(問題)
次の(ア)から(エ)に当てはまるものを、「必要条件」「十分条件」「必要十分条件」「必要条件でも十分条件でもない」の中から選びなさい。ただし、 \(x\) 、 \(y\) は実数とします。
(\(1\))\(x+y=0\) であることは、 \(x=0\) かつ \(y=0\) であるための(ア)である。
(\(2\))\(x<-2\) は、\(x<0\) の(イ)である。
(\(3\))\(x=y=0\) であることは、\(x^2+y^2=0\) であるための(ウ)である。
(\(4\))\(xy=10\) は、\(x=5\)または\(y=2\)であるための(エ)である。
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答案の例
(\(1\))
\(x+y=0 \longrightarrow x=0\) かつ \(y=0 \cdots \) 偽
(反例:\(x=-2\)、\(y=2\))
\(x=0\) かつ \(y=0 \longrightarrow x+y=0 \cdots \) 真
よって、必要条件。
(\(2\))
\(x<-2 \longrightarrow x<0 \cdots \) 真
\(x<0 \longrightarrow x<-2 \cdots \) 偽
(反例:\(x=-1\))
よって、十分条件。
(\(3\))
\(x=y=0 \longrightarrow x^2+y^2=0 \cdots \) 真
\(x^2+y^2=0 \longrightarrow x=y=0 \cdots \) 真
よって、必要十分条件。
(\(4\))
\(xy=10 \longrightarrow x=5\)または\(y=2 \cdots \) 偽
(反例:\(x=1\)、\(y=10\))
\(x=5\)または\(y=2 \longrightarrow xy=10 \cdots \) 偽
(反例:\(x=5\)、\(y=1\))
よって、必要条件でも十分条件でもない。
解説
<基本的な考え方>
まず解説に移る前に、基本的な命題に関する考え方を説明します。
数学的に適切な表現ではないかもしれませんが、わかりやすさを重視して解説していきます。
まず、問題の出題方法についてです。これは、今回の(\(1\))から(\(4\)) を見てもらえればわかるように、様々な書かれ方がありますね。
「Aであることは、Bであるための~」
「Aは、Bの~」
「Aであることは、Bの~」
など
これらはすべて同じ意味になります。
さあ、ここからが本番です。
上記の「Aであることは、Bであるための~」という文章を例にとって説明します。
これはいわゆる、「Aは、Bとどういう関係なの?」というように、AとB \(2\) つの関係性が問われています。
少しだけ中学校の話になりますが、証明を学んだ際、仮定と結論があったのを覚えていますか?
あれも、「仮定が成り立つとき、結論が言えるの?」というように、 \(2\) つの関係性を説明したものでした。
そしてその際、「AならばBを証明しなさい。」のように書かれていましたね。
例えば、「AB=CDならば△ABC≡△DEFを証明しなさい。」のような感じです。
証明が嫌いな人。大丈夫です。今回使うのは、「AならばB」という言葉の部分だけです。
今回も、 \(2\) つの関係性を考えているので、
「Aであることは、Bであるための~」
という文章を、
「AならばB」
という文章に置き換えて考えます。これが、命題を解く際の最初のステップです。
そして、証明を習った際、逆についても学びましたね。
「BならばA」という場合を考え、それが成り立つのかどうか、というものです。
数学において、ものごとの逆が成り立つかどうかを確認することは、非常に重要なのです。
なので、中学校でも、証明と一緒に逆の考えも学ぶんですね。
少し余談ですが、小学校の時、「検算」という考えを学んだことを覚えていますか?
これもいわゆる、逆の考えと同じです。
小学校に関わらず中学校でも文章題でよく使う考えですが、計算が本当にあっているかどうかを確かめるために、出てきた答えを問題文に戻してみて、つじつまが合っているかを確認する手法でしたね。
さて、逆の考えが重要だということを説明したところで、今回の問題に戻りましょう。
「AならばB」と同時に、「BならばA」も考えていくわけですね。
次に、わかりやすくするために、
「AならばB」が成り立つ場合、「A \(\longrightarrow\) B」
「BならばA」が成り立つ場合、「A \(\longleftarrow\) B」
と表現することとします。
このとき、「BならばA」のことを「B \(\longrightarrow\) A」と表現しても同じ意味にはなりますが、「Aであることは、Bであるための~」という文章のため、AとBの位置は、Aが先、Bが後、の順で表記するようにしましょう。
上の模範解答では、問題集などの解答冊子に書かれている表記に合わせるため、わざと「B \(\longrightarrow\) A」という書き方をしていますが、以下の解説では、すべてAが先、Bが後、の順で表記していきます。(その方がわかりやすいため。)
では、ここからは実際の問題で続きを見ていくことにしましょう。
(\(1\))
今回は、「\(x+y=0\) であることは、 \(x=0\) かつ \(y=0\) であるための~」という文章なので、
「\(x+y=0 \longrightarrow x=0\) かつ \(y=0 \cdots\)①」
「\(x+y=0 \longleftarrow x=0\) かつ \(y=0 \cdots\)②」
という \(2\) つの場合を考えることになりますね。
まず①について考えます。
\(x+y=0\) は仮定なので、 \(x\) と \(y\) の和が \(0\) になることは前提となります。その上で、それが成り立つ組み合わせは、
\(x=0\) かつ \(y=0\)
しかないのか?ということが問われています。
どうでしょうか?
答えは、\(x=0\) 、 \(y=0\)以外にも成り立つ組み合わせがあります。
例えば\(x=-2\)、\(y=2\)などですね。この組み合わせは、\(x+y=0\) という前提を満たしつつ、\(x=0\) かつ \(y=0\)とは違う組み合わせですね。このように、成り立たない場合の例のことを、反例と呼びます。この用語は、中学校で学習済みの内容になります。
つまり、このことがらが成り立たないことから、「\(x+y=0 \longrightarrow x=0\) かつ \(y=0\)」は成立しないということですね。
このように、命題において、成立しないことがらがあったとき、それを「偽(ぎ)」と言います。
また、それとは対称的に、成立することがらがあったとき、それを「真(しん)」と言います。
新しい用語ですね、覚えておきましょう。
では次に、②について考えます。
\(x=0\) かつ \(y=0\) が仮定となり、その場合に、 \(x+y=0\) になるかどうかです。
これは、真(しん)です。よって、「\(x+y=0 \longleftarrow x=0\) かつ \(y=0\)」は成立するということです。
さて、ここまでの情報を整理します。
今成り立っていたのは、②の場合のみでした。
つまり「\(x+y=0 \longleftarrow x=0\) かつ \(y=0\)」の場合のみです。
このように、「A \(\longleftarrow\) B」となっているとき、Aの立場になって考えると、Bから矢印が向いているということは、Bから必要とされている、と見ることができます。
よって、左側の矢印が成り立つ場合、これを「必要条件」と言います。
この見方は、あくまでも覚えるために筆者が考えたものですので、一般的な覚え方ではありません。
また、見方によっては、逆の矢印である「A \(\longrightarrow\) B」のことを、Aが必要としている、と見なせば、こちらが「必要条件」っぽく見えてしまうのも確かです。
しかしみなさん、自分が誰かを頼るより、誰かに必要とされる(頼られる)方が嬉しくないですか?
嬉しい方を採用しましょう!
(覚え方の一つとして紹介しているものなので、合わなければ無理してこの覚え方をするのはやめましょう。)
この記事では、必要とされる方、つまり「A \(\longleftarrow\) B」が「必要条件」という覚え方をするとします。
そして、これとは逆の「A \(\longrightarrow\) B」を「十分条件」と言います。
\(2\) 種類どちらも覚え方をつけると、どっちがどっちかわからなくなります。
なので、「十分条件」の方には覚え方はつけません。「必要条件」の矢印の向きだけ覚えておきましょう。
話を元に戻すと、今回は「\(x+y=0 \longleftarrow x=0\) かつ \(y=0\)」というように、左の矢印が成り立っていたので、「必要条件」ということになるわけです。
(\(2\))
今回は、「\(x<-2\) は、\(x<0\) の~」と聞かれているので、
「\(x<-2 \longrightarrow x<0 \cdots\)①」
「\(x<-2 \longleftarrow x<0 \cdots\)②」
の \(2\) つを考えていきます。前述の通り、\(x<-2\)と\(x<0\)の位置は崩さずに表記して、考えていきましょう。
まず①についてです。
\(x<-2\) が成り立つと、その数は必ず \(x<0\) の範囲に入っているか、と聞かれています。
これは、真です。
\(-2\) より小さい数は、当然 \(0\) よりも小さい数になっていますね。
次に②についてです。
仮定が \(x<0\) になっていますので、 \(0\) より小さい数というのは、すべて \(x<-2\) という範囲に入っていますか、と聞かれています。
これは、偽です。
\(0\) より小さい数の中には \(-1\) が含まれますが、これは \(x<-2\) を満たしませんね。
よって、反例は \(-1\) となります。
つまり、今回は右側の矢印です。左側の矢印である「A \(\longleftarrow\) B」が必要条件でした。その逆なので、これは十分条件ということです。
(\(3\))
今回も同様に、
\(x=y=0 \longrightarrow x^2+y^2=0 \cdots\)①
\(x=y=0 \longleftarrow x^2+y^2=0 \cdots\)②
を考えていきます。
まず①について、 \(x=0\)と\(y=0\) のとき、\(x^2+y^2\) は当然 \(0\) になりますね。
次に②について、\(x^2+y^2\) が \(0\) になるとき、 \(2\) 乗の和が \(0\) になるためには \(x\) や \(y\) は \(0\) 以外にはなりえないので、\(x=y=0\) を満たします。
よって。どちらの矢印も満たす形となりました。
この場合は、必要条件と十分条件を満たすので、「必要十分条件」と言います。
(\(4\))
\(xy=10 \longrightarrow x=5\)または\(y=2 \cdots \)①
\(xy=10 \longleftarrow x=5\)または\(y=2 \cdots \)②
まずは①について、\(x\) と \(y\) をかけて \(10\) になるとき、\(x=5\) もしくは \(y=2\) になるか。
かけて \(10\) になれば何でもいいので、 \(x=1\) 、 \(y=10\) でもいいことになりますね。しかし、これは\(x=5\) もしくは \(y=2\) に当てはまりません。
よってこれは偽となります。(反例は、\(x=1\) 、 \(y=10\)などです)
次に②について、\(x=5\) もしくは \(y=2\) のとき、\(x\) と \(y\) をかけたら必ず \(10\)になるか。
例えば\(x=5\)とすれば前提条件は満たされますが、別に \(y\) の値によって、かけれらた数は変わってくるので、必ず \(10\) になるはずがありません。
よって、これも偽となります。(反例は、\(x=5\) 、 \(y=1\)などです)
よって、これはどちらの矢印も満たしません。
つまり、必要条件でも十分条件でもないということです。
両方成り立つ、もしくは両方成り立たないといった場合は簡単なので、片方の矢印が成り立つ場合に「必要条件」?「十分条件」?と混乱しがちですね。これらを正確にマスターし、惑わされることがないようにしましょう。
おわりに
さいごまで読んでいただきありがとうございました!
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