乗法定理とは
今回は、乗法定理を使用した問題を解説していきます。
乗法定理とは、簡単に言うと条件付き確率の公式の式変形から得られる公式となります。よって、乗法定理を理解する前に、条件付き確率を理解する必要があります。ここから、条件付き確率の公式とそれによって得られる乗法定理の公式を説明していこうと思います!ある試行における2つの事象を \(A\), \(B\) とし、\(P(A)\neq 0\) とする。
【条件付き確率】
事象 \(A\) が起こったときに事象 \(B\) が起こる確率 \(P_A(B)\) は
\(P_A(B)=\displaystyle\frac{P(A\cap B)}{P(A)}\)
【通常の確率と条件付き確率の違い】
通常の確率
\(P(A)=\displaystyle\frac{(求めたいパターン)}{(全てのパターン)}\)
条件付き確率
\(P(A)=\displaystyle\frac{(求めたいパターン)}{(条件のパターン)}\)
↓条件付き確率の問題はこちらをチェック
このとき、
【確率の乗法定理】
\(P(A\cap B)=P(A)P_A(B)\)
式のように、条件付き確率を式変形して導かれる式が乗法定理の公式となります。具体的にどのような問題で使用されるのかを見ていきましょう。
乗法定理(問題)
\(10\) 本のくじ野中に当たりくじが \(3\) 本ある。一度引いたくじはもとに戻さない。
(1) 初めに \(a\) が \(1\) 本引き、次に \(b\) が \(1\) 本引くとき、次の確率を求めよ。
(ア) \(a\), \(b\) ともに当たる確率
(イ) \(b\) が当たる確率
(2) 初め \(a\) が \(1\) 本ずつ \(2\) 回引き、次に \(b\) が \(1\) 本引くとき、\(a\), \(b\) が \(1\) 本ずつ当たる確率を求めよ。
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乗法定理(答案の例)
(1) 初めに \(a\) が \(1\) 本引き、次に \(b\) が \(1\) 本引くとき、次の確率を求めよ。
(ア) \(a\), \(b\) ともに当たる確率
\(a\) が当たるという事象を \(A\), \(b\) が当たるという事象を \(B\) とすると、
求めたいのは、\(P(A\cap B)\) となる。
乗法定理より、\(P(A\cap B)=P(A)P_A(B)\) を求めれば良い。
\(a\) が当たる確率
\(P(A)=\displaystyle\frac{3}{10}\)
\(b\) が当たる確率
\(P_A(B)=\displaystyle\frac{2}{9}\)
したがって、
\(P(A\cup B)=\displaystyle\frac{3}{10}\times \frac{2}{9}\)
\(=\displaystyle\frac{6}{90}=\frac{1}{15}\)
(イ) \(b\) が当たる確率
\(a\) が当たり、\(b\) が当たる確率
(ア)より \(P(A\cap B)=\displaystyle\frac{1}{15}\)
\(a\) は当たらず \(b\) は当たる確率
\(P(\bar{A}\cap B)=\displaystyle\frac{7}{10}\times \frac{3}{9}\)
\(=\displaystyle\frac{21}{90}=\frac{7}{30}\)
よって、
\(P(B)=\displaystyle\frac{1}{15}+\displaystyle\frac{7}{30}\)
\(=\displaystyle\frac{9}{30}=\frac{3}{10}\)
(2) 初め \(a\) が \(1\) 本ずつ \(2\) 回引き、次に \(b\) が \(1\) 本引くとき、\(a\), \(b\) が \(1\) 本ずつ当たる確率を求めよ。
\(\displaystyle\frac{3}{10}\times \frac{7}{9}\times \frac{2}{8}+\displaystyle\frac{7}{10}\times \frac{3}{9}\times \frac{2}{8}\)
\(=\displaystyle\frac{42}{720}+\frac{42}{720}=\frac{84}{720}=\frac{7}{60}\)
乗法定理(解説)
(1) 初めに \(a\) が \(1\) 本引き、次に \(b\) が \(1\) 本引くとき、次の確率を求めよ。
(ア) \(a\), \(b\) ともに当たる確率
\(a\) が当たるという事象を \(A\), \(b\) が当たるという事象を \(B\) とすると、
求めたいのは、\(P(A\cap B)\) となる。
乗法定理より、\(P(A\cap B)=P(A)P_A(B)\) を求めれば良い。
☆ \(a\) が当たる確率
\(P(A)=\displaystyle\frac{3}{10}\)
☆ \(b\) が当たる確率
\(a\) が引いた後引いたものは戻さずに \(b\) が引くので、
問題文を言い換えると、「\(a\) が当たったという条件のもとで \(b\) が当たる確率」
よって、\(P_A(B)\) を求めれば良い。
\(P_A(B)=\displaystyle\frac{2}{9}\)
したがって、
\(P(A\cup B)=\displaystyle\frac{3}{10}\times \frac{2}{9}\)
\(=\displaystyle\frac{6}{90}=\frac{1}{15}\)
(イ) \(b\) が当たる確率
言い換えると、「\(a\) が当たり、\(b\) が当たる確率」または「\(a\) は当たらず \(b\) は当たる確率」
☆ \(a\) が当たり、\(b\) が当たる確率
(ア)より \(P(A\cap B)=\displaystyle\frac{1}{15}\)
☆ \(a\) は当たらず \(b\) は当たる確率
\(P(\bar{A}\cap B)=\displaystyle\frac{7}{10}\times \frac{3}{9}\)
\(=\displaystyle\frac{21}{90}=\frac{7}{30}\)
よって、
\(P(B)=\displaystyle\frac{1}{15}+\displaystyle\frac{7}{30}\)
\(=\displaystyle\frac{9}{30}=\frac{3}{10}\)
(2) 初め \(a\) が \(1\) 本ずつ \(2\) 回引き、次に \(b\) が \(1\) 本引くとき、\(a\), \(b\) が \(1\) 本ずつ当たる確率を求めよ。
\((a_1\), \(a_2\), \(b)\) で当たり外れを表すと、以下のパターンが考えられる。
① \((\bigcirc\), \(\times\), \(\bigcirc)\)
② \((\times\), \(\bigcirc\), \(\bigcirc)\)
① \((\bigcirc\), \(\times\), \(\bigcirc)\)
\(\displaystyle\frac{3}{10}\times \frac{7}{9}\times \frac{2}{8}=\frac{42}{720}\)
② \((\times\), \(\bigcirc\), \(\bigcirc)\)
\(\displaystyle\frac{7}{10}\times \frac{3}{9}\times \frac{2}{8}=\frac{42}{720}\)
よって、\(\displaystyle\frac{42}{720}+\frac{42}{720}=\frac{84}{720}=\frac{7}{60}\)
おわりに
今回は、乗法定理を使用した問題を解説しました。
このように、\(1\) 回目に引いたくじを戻さずに \(2\) 回目を引く場合、各試行は独立試行にはなりません。そんな場合に、\(P(A\cap B)\) を求めたい場合に乗法定理を用いる必要が出てきます。
↓独立試行についてはこちらをチェック
さいごまで読んでいただきありがとうございました!
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