反復試行の確率(サイコロ編)
反復試行は、同じ試行が繰り返される時に使う考え方です。
例)サイコロを 1 回振る。この試行を 5 回繰り返すとき、1 の目がちょうど 3 回出る確率を求めなさい。
試行(「サイコロを1回振る。」)が複数回繰り返される時は反復試行の考え方を使います。では、公式と公式の考え方を見ていきましょう。
反復試行の確率の公式
反復試行の公式
\(1\) 回の試行で事象 \(A\) が起こる確率を \(p\) とする。この試行を \(n\) 回繰り返すとき、
事象 \(A\) がちょうど \(r\) 回起こる確率は、
$${}_nC_r p^r (1-p)^{n-r}$$
となる。
例)コインを5回振るとき、4回表が出る確率を求めよ。
表が出る確率は、\(\displaystyle\frac{1}{2}\)
裏が出る確率は、\(\displaystyle\frac{1}{2}\)
よって、公式に当てはめると、
$${}_5C_4\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^4\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^1$$
となります。ここで、\({}_5C_4\) が必要な理由を考えてみましょう。
5回振る時とき、4回表が出るパターンを単純に並べてみると、
表, 表, 表, 表, 裏
表, 表, 表, 裏, 表
表, 表, 裏, 表, 表
表, 裏, 表, 表, 表
裏, 表, 表, 表, 表
これらすべて表が4回、裏が1回であることには変わりはありませんね。つまり、何回目に表や裏が出るかを考えなければならないのです。
仮に、\({}_5C_4\) を付けずに、
$$\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^4\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^1$$
としたとすると、これは上記の並び替えの1パターンしか満たしていないことになります。したがって、表が4回、裏が1回の合計5回の並び替え \({}_5C_4\) を掛け算する必要があるのです。
サイコロの確率問題
今回は、反復試行の問題の中でもサイコロを利用した問題です。
サイコロを使った確率問題は非常に多く出題されるので、サイコロの問題で覚えておくと良いポイントをまとめておきます。
① \(1\) の目から \(6\) の目まである。
② どの目が出る確率も同様に確からしい。
⇨ どの目も出る確率は均一に \(\displaystyle\frac{1}{6}\) となる。
③ さいころの出目の全パターン
\(2\) 回振る ⇨ \(6 \times 6=36\) 通り
\(3\) 回振る ⇨ \(6 \times 6 \times 6=216\) 通り
\(4\) 回振る ⇨ \(6 \times 6 \times 6 \times 6=1296\) 通り
特に③はサイコロの問題がきたらすぐに思いつくようにしましょう。サイコロを3回振るときは、\(216\) パターンです。上手い方法が思いつかなかったら、すべて並べてあげれば問題を解くことができることも、念のため覚えておくと良いでしょう。
>>詳細はこちらから
反復試行の問題
\(1\) つのサイコロを \(5\) 回投げる時、次の確率を求めなさい。
(1) 素数の目がちょうど \(4\) 回出る確率を求めなさい。
(2) 素数の目が \(4\) 回以上出る確率を求めなさい。
反復試行の問題(答案の例)
(1) 素数の目がちょうど \(4\) 回出る確率を求めなさい。
素数の目が出る確率は、\(\displaystyle\frac{3}{6}=\frac{1}{2}\)
となる。よって、
\begin{eqnarray} {}_5C_4\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^4\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^1 &=& 5\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{16}\right)\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)\\ &=& 5\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{32}\right)\\ &=& \displaystyle\frac{5}{32} \end{eqnarray}(2) 素数の目が \(4\) 回以上出る確率を求めなさい。
\(4\) 回出る確率は (1) で求めたので、\(\displaystyle\frac{5}{32}\)
\(5\) 回出る確率は、
\begin{eqnarray} {}_5C_5\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^5\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^0 &=& 1\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{32}\right)\cdot 1\\ &=& \displaystyle\frac{1}{32}\\ \end{eqnarray}よって、\(\displaystyle\frac{5}{32}+\displaystyle\frac{1}{32}=\displaystyle\frac{6}{32}=\displaystyle\frac{3}{16}\)
反復試行の問題(解説)
(1) 素数の目がちょうど \(4\) 回出る確率を求めなさい。
公式の文字 \(1\) つ \(1\) つを確認してみます。
\({}_nC_r p^r (1-p)^{n-r}\) より \(n=5\), \(r=4\), \(p\) について
素数の目は \(2\), \(3\), \(5\) より
素数の目が出る確率は、\(p=\displaystyle\frac{3}{6}=\frac{1}{2}\) となる。
\(n\), \(r\), \(p\) を代入すると、
\begin{eqnarray} {}_5C_4\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^4\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^1 &=& 5\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{16}\right)\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)\\ &=& 5\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{32}\right)\\ &=& \displaystyle\frac{5}{32} \end{eqnarray}なお、\({}_5C_4\)については、素数が出る \(4\) 回分が \(5\) 回中どのタイミングで出てくるかを考慮したものになります。言い換えれば、素数が出ない \(1\) 回分がいつ現れるかを考えることに等しいので、\({}_5C_1\) として計算しても全く同じ答えになりますので、合わせて覚えておきましょう。
(2) 素数の目が \(4\) 回以上出る確率を求めなさい。
まず今回の問題で、「 \(4\) 回以上」という言葉が何を意味しているかを考えましょう。
「素数の目が \(4\) 回以上出る」を言い換えると、「素数の目が \(4\) 回または \(5\) 回出る」となります。
\(4\) 回出る確率は (1) で求めたので、\(\displaystyle\frac{5}{32}\)
\(5\) 回出る確率は、
\begin{eqnarray} {}_5C_5\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^5\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^0 &=& 1\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{32}\right)\cdot 1\\ &=& \displaystyle\frac{1}{32} \end{eqnarray}確率の計算において、「または」と来たら \(2\) つの確率の足し算となります。
今回、「 \(4\) 回出る」または「 \(5\) 回出る」より、\(4\) 回出る確率と\(5\) 回出る確率の和を考えれば答えとなります。
よって、\(\displaystyle\frac{5}{32}+\displaystyle\frac{1}{32}=\displaystyle\frac{6}{32}=\displaystyle\frac{3}{16}\)
となります。
<補足>
今回の問題での「または」という表現に関する、確率に出てくる紛らわしい計算を少し見てみましょう。こちらに関する詳しい説明を見たい方は、別の記事で紹介していますので、そちらをチェックしてみてください。まず、以下のような問題を考えます。
\(A\) さんと \(B\) さんがさいころを振ったとき、次の確率を求めよ。
① \(A\) さんが \(1\) を出す、または、 \(B\) さんが \(1\) を出す確率
② \(A\) さんが \(1\) を出し、かつ、 \(B\) さんも \(1\) を出す確率
\(2\) つの問題文の違いはすぐにお分かりかと思います。
一つひとつ解き方を考えてみましょう。
①の場合は、「または」なので、\(A\) さんが \(1\) を出す確率と \(B\) さんが \(1\) を出す確率の和を求め、
$$\displaystyle\frac{1}{6}+\displaystyle\frac{1}{6}=\displaystyle\frac{1}{3}$$
となります。
しかし、②の場合は、\(A\) さんが \(1\) を出し、さらに \(B\) さんも \(1\) を出さなければなりません。こちらの方が難易度が高くなりますね。このように、「かつ」などの表現が使われるものは、文章の前後の事象がどちらも起こらなければなりません。「または」の場合は、文章の前後の事象のうち、どちらか一方が起こればよかったので、この点で①と②には大きな違いがあります。ちなみに、②の場合の計算は、和ではなく積を考えます。
よって、
$$\displaystyle\frac{1}{6} \times \displaystyle\frac{1}{6}=\displaystyle\frac{1}{36}$$
となります。結果を見ても、②の方が難しことがわかりますね。
<補足>のまとめ
「\(A\) または \(B\)」
⇨ \(A\) か \(B\) のどちらかが起こればいい
⇨ 和を計算する
「\(A\) かつ \(B\)」(\(A\) が起きてさらに \(B\) が起こる)
⇨ \(A\) と \(B\) どちらも起こらなければならない
⇨ 積を計算する
詳しくはこちらの記事にも
おわりに
今回は、サイコロを5回投げる時の反復試行の確率問題でした。
反復試行の公式
\(1\) 回の試行で事象 \(A\) が起こる確率を \(p\) とする。この試行を \(n\) 回繰り返すとき、
事象 \(A\) がちょうど \(r\) 回起こる確率は、
$${}_nC_r p^r (1-p)^{n-r}$$
となる。
さいごまで読んでいただきありがとうございました!
【最新】こちらの記事がおすすめ!