隣接3項間の漸化式
今回は、隣接3項間の漸化式を扱っていきます。
これまでの漸化式は、\(a_n\) と \(a_{n+1}\) という隣り合った \(2\) つの項に関する問題でした。今回は「隣接 \(3\) 項間」、つまり \(a_{n+2}\) という、もう \(1\) つの隣り合う数が含まれた漸化式を扱っていきます。しかし、隣接 \(3\) 項間の漸化式は、式を変形することで今までの漸化式と同じ見た目にすることができます。これができてしまえば、一般的な漸化式の問題となりますね。
では、実際に問題を見ていきましょう。
隣接3項間の問題
次の条件で定義される数列 \(\bigl\{ a_n \bigr\}\) の一般項を求めなさい。
( \(1\) ) \(a_1=1\)、\(a_2=2\)、\(5a_{n+2}-8a_{n+1}+3a_n=0\)
( \(2\) ) \(a_1=1\)、\(a_2=4\)、\(a_{n+2}-5a_{n+1}+6a_n=0\)
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隣接3項間の問題(答案の例)
( \(1\) )
漸化式を変形すると、
\(a_{n+2}-a_{n+1}=\displaystyle \frac{3}{5} (a_{n+1}-a_n)\)
となる。ここで、\(a_{n+1}-a_n=b_n\) とすると、
\(b_{n+1}=\displaystyle \frac{3}{5}b_n\)
また、\(b_1=a_2-a_1=1\) なので、
\(b_n=\Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr)^{n-1}\)
これにより、
\(a_{n+1}-a_n=\Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr)^{n-1}\)
ゆえに、
\(a_n=1+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1} \Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr)^{n-1}\)
\(=1+\displaystyle \frac{5}{2} \times \Bigl\{ 1-\Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr) ^{n-1} \Bigr\}\)
\(=\displaystyle \frac{7}{2}-\displaystyle \frac{5}{2} \Bigl( \displaystyle \frac{3}{5} \Bigr) ^{n-1}\)
となる。これは \(n=1\) のときも成り立つ。よって、
\(a_n=\displaystyle \frac{7}{2}-\displaystyle \frac{5}{2} \Bigl( \displaystyle \frac{3}{5} \Bigr) ^{n-1}\)
( \(2\) )
漸化式を変形すると、
\(a_{n+2}-2a_{n+1}=3 (a_{n+1}-2a_n)\) \(\cdots\) ①
\(a_{n+2}-3a_{n+1}=2 (a_{n+1}-3a_n)\) \(\cdots\) ②
となる。①について、\(a_{n+1}-2a_n=b_n\) とすると、
\(b_{n+1}=3b_n\)
また、\(b_1=a_2-2a_1=2\) なので、
\(b_n=2 \times 3^{n-1}\)
これにより、
\(a_{n+1}-2a_n=2×3^{n-1}\) \(\cdots\) ③
②について、\(a_{n+1}-3a_n=b_n\) とすると、
\(b_{n+1}=2b_n\)
また、\(b_1=a_2-3a_1=1\) なので、
\(b_n=1 \times 2^{n-1}\)
これにより、
\(a_{n+1}-3a_n=1×2^{n-1}\) \(\cdots\) ④
③ 、④により、
\(a_n=2 \times 3^{n-1}-2^{n-1}\)
隣接3項間の問題(解説)
( \(1\) )
まず、一般的な漸化式を解く時の手順を振り返りましょう。\(a_n\) と \(a_{n+1}\) の部分を \(x\) などの文字で置き、特性方程式を作りましたね。今回も特性方程式を利用して解いていきます。ただし以前とは異なり、\(a_n\) 、 \(a_{n+1}\) 、 \(a_{n+2}\) という \(3\) つの項が式に中に含まれているため、やり方が少し異なります。
\(a_{n+2}=x^2\)
\(a_{n+1}=x\)
\(a_n=1\)
として、 \(x\) に関する \(2\) 次方程式を作るのです。つまり、
\(5x^2-8x+3=0\)
という方程式を作り、これを解きます。
\(5x^2-8x+3=0\)
\((5x-3)(x-1)=0\)
\(x=1\)、\(x=\displaystyle \frac{3}{5}\)
\(2\) 次方程式なので、基本的に解は \(2\) つ出てくるはずですね。\(2\) つの解の種類によって以下のように解き方が少し変わってきます。
① 解の中に \(1\) が含まれている場合
② 解の中に \(1\) が含まれていない場合
( \(1\) )は①の場合、あとで解説する( \(2\) )は②の場合となります。\(1\) が含まれている場合には、次のように式を作ります。
\(a_{n+2}-1 \times a_{n+1}=\displaystyle \frac{3}{5} (a_{n+1}-1 \times a_n)\)
\(1\) と \(\displaystyle \frac{3}{5}\) の配置がおわかりになりますか?例えば \(x=1\)、\(x=2\) が解であれば、
\(a_{n+2}-1 \times a_{n+1}=2 (a_{n+1}-1 \times a_n)\)
となるわけです。\(1\) の位置は変わらず、もう一方の解を右辺の最初に置くわけですね。また、通常 \(1\) は省略しますので、一般的には
\(a_{n+2}-a_{n+1}=\displaystyle \frac{3}{5} (a_{n+1}-a_n)\)
のように表現します。また、漸化式のときにも話したように、特性方程式を使ったことは、実際に答案には書かないようにしましょう。この式を作ったら、あとは今までの漸化式と同様の考え方をしていきます。
\(a_{n+1}-a_n=b_n\) とすると、\(n\) に \((n+1)\) を代入すれば、
\(a_{n+2}-a_{n+1}=b_{n+1}\)
を得ることができますね。これにより、もとの式は
\(b_{n+1}=\displaystyle \frac{3}{5} b_n\)
となります。これは、\(b_n\) に\(\displaystyle \frac{3}{5}\) をかけると、次の項である \(b_{n+1}\) が出てくるという意味なので、公比が\(\displaystyle \frac{3}{5}\) の等比数列となっていますね。また、初項である \(b_1\) は、\(a_{n+1}-a_n=b_n\) を使い、
\(b_1=a_2-a_1\)
\(=2-1=1\)
と求めることができるため、
\(b_n=1 \times \Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr)^{n-1}\)
\(b_n=\Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr)^{n-1}\)
のように \(b_n\) を定めることができます。また、\(a_{n+1}-a_n=b_n\) により、
\(a_{n+1}-a_n=\Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr)^{n-1}\)
となります。このように式を変形することで、\(a_{n+2}\) を消し、今までの漸化式と同じような見た目にすることができます。ここで、この式が表す意味について考えていきましょう。\(a_{n+1}-a_n\) とは、隣同士の項を引いている式ですね。もし、\(a_{n+1}-a_n=2\) などであれば、隣同士の項の差が \(2\) なので、公差が \(2\) の等差数列という意味になります。
では、
\(a_{n+1}-a_n=\Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr)^{n-1}\)
とは、何を表しているのでしょうか?隣同士の項の差が一定の値ではないが、その差を順番に列にした場合、\(\Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr)^{n-1}\) という規則性をもっていた、ということです。お気づきでしょうか?これは、 \(a_n\) に関する階差数列を表しており、その特徴が、初項が \(1\) 、公比が \(\displaystyle \frac{3}{5}\) の等比数列であることを示しています。つまり、この階差数列の特徴を持つもとの数列 \(\bigl\{ a_n \bigr\}\) を知りたい場合は、
\(a_n=a_1+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1} \Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr)^{n-1}\)
\(=1+\displaystyle \frac{1 \times \Bigl\{ 1-\Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr) ^{n-1} \Bigr\}}{1-\displaystyle \frac{3}{5}}\)
※等比数列の和の公式を使用
\(=1+\displaystyle \frac{5}{2} \times \Bigl\{ 1-\Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr) ^{n-1} \Bigr\}\)
\(=\displaystyle \frac{7}{2}-\displaystyle \frac{5}{2} \Bigl( \displaystyle \frac{3}{5} \Bigr) ^{n-1}\)
となります。実際は、分数の分子や分母に再び分数を書くことは数学的ではないので、答案にはこの途中式は書かないようにしましょう。また、これは \(n=1\) としたときも、
\(a_1=\displaystyle \frac{7}{2}-\displaystyle \frac{5}{2} \Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr) ^0\)
\(=\displaystyle \frac{7}{2}-\displaystyle \frac{5}{2} \times 1=1\)
となり、問題の \(a_1\) と一致します。よって、今回の \(\bigl\{ a_n \bigr\}\) は、
\(\displaystyle \frac{7}{2}-\displaystyle \frac{5}{2} \Bigl(\displaystyle \frac{3}{5} \Bigr) ^{n-1}\)
( \(2\) )
( \(1\) )で述べた通り、こちらは特性方程式を解くと、解の中に \(1\) が含まれない場合となります。
実際、
\(x^2-5x+6=0\)
\((x-3)(x-2)=0\)
\(x=3\)、\(x=2\)
のように、\(1\) 以外の解を得ることができますね。こういった場合は、以下のように、式を \(2\) 本作ります。
\(a_{n+2}-2 \times a_{n+1}=3 (a_{n+1}-2 \times a_n)\)
\(a_{n+2}-3 \times a_{n+1}=2 (a_{n+1}-3 \times a_n)\)
そして、この \(2\) 本の式について、各々( \(1\) )と同じ作業をしていきます。
<「\(a_{n+2}-2a_{n+1}=3 (a_{n+1}-2a_n)\) 」について>
\(a_{n+1}-2a_n=b_n\) とすると、
\(b_{n+1}=3b_n\)
\(b_1=a_2-2a_1=2\) により、初項 \(2\) 、公比 \(3\) の等比数列なので、
\(b_n=2×3^{n-1}\)
\(a_{n+1}-2a_n=b_n\) なので、
\(a_{n+1}-2a_n=2 \times 3^{n-1}\)
<「\(a_{n+2}-3a_{n+1}=2 (a_{n+1}-3a_n)\) 」について>
\(a_{n+1}-3a_n=b_n\) とすると、
\(b_{n+1}=2b_n\)
\(b_1=a_2-3a_1=1\) により、初項 \(1\) 、公比 \(2\) の等比数列なので、
\(b_n=1 \times 2^{n-1}\)
\(a_{n+1}-3a_n=b_n\) なので、
\(a_{n+1}-3a_n=1 \times 2^{n-1}\)
ここで、この \(2\) つの式の両辺をそれぞれ引いてみます。すると、
(左辺)\(=a_{n+1}-2a_n-(a_{n+1}-3a_n)\)
\(=a_{n+1}-2a_n-a_{n+1}+3a_n=a_n\)
(右辺)\(=2 \times 3^{n-1}-1 \times 2^{n-1}\)
\(=2 \times 3^{n-1}-2^{n-1}\)
となるため、
\(a_n=2 \times 3^{n-1}-2^{n-1}\)
と答えを導くことができます。差を取ることによって、左辺の \(a_{n+1}\) が消えるわけですね。このように、隣接 \(3\) 項間の漸化式では、\(a_{n+2}\) 、 \(a_{n+1}\) を \(1\) つずつ消していくことで、 \(a_n\) を求めていきます。
おわりに
今回は、隣接3項間の漸化式を扱いました。
これまでの数列の知識が必要になりますね。
▼数列の基本
▼階差数列
さいごまで読んでいただきありがとうございました!
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