対偶を用いた証明
今回は対偶を用いた証明問題です。
対偶とは、「\(P\) ならば \(Q\) である」に対して、「\(Q\) でないならば \(P\) でない。」のことです。
【対偶を使用するタイミング】
迷わず使ってみましょう。対偶への変形は難しくありません。元の命題のままで、手が止まってしまいそうなら対偶に変形してみてください。
【対偶への変換方法】
元の命題を”裏”にしてから”逆”にする。もしくは、”逆”にしてから”裏”にする。
<元の命題>
積 \(ab\)が \(3\)の倍数ならば \(a\) または \(b\) は \(3\) の倍数である。
<逆>※「ならば」の両側を入れ替える。
\(a\) または \(b\) は \(3\) の倍数である。ならば、積 \(ab\) が \(3\) の倍数である。
<裏>※「ならば」の両側を否定する。
積 \(ab\) が \(3\) の倍数ではない。ならば \(a\) または \(b\) は \(3\) の倍数ではない。
<対偶>※”逆(裏)” をしてから ”裏(逆)”をする。
\(a\) かつ \(b\) は \(3\) の倍数ではない。ならば、積 \(ab\) は \(3\) の倍数ではない。
【対偶法】
「元の命題」と「対偶にした命題」の真偽は一致します。
よって、元の命題を証明したい時は、対偶にした命題を証明しても同じ結果が得られます。
対偶を用いた証明(問題)
整数 \(a\), \(b\) について、積 \(ab\)が \(3\)の倍数ならば \(a\) または \(b\) は \(3\) の倍数である。この命題を証明せよ。
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答案の例
対偶にすると「\(a\) は \(3\) の倍数ではない」かつ「\(b\) は \(3\) の倍数ではない」となる。
① \(a=3k+1\), \(b=3l+1\) の時
\begin{eqnarray} ab &=& (3k+1)(3l+1)\\ &=&9kl+3k+3l+1\\ &=&3(3kl+k+l)+1 \end{eqnarray}\(3kl+k+l\) は整数より、\(ab\) は \(3\) の倍数ではない。
② \(a=3k+1\), \(b=3l+2\) の時
\begin{eqnarray} ab&=&(3k+1)(3l+2)\\ &=&9kl+6k+3l+2\\ &=&3(3kl+2k+l)+2 \end{eqnarray}\(3kl+2k+l\) は整数より、\(ab\) は \(3\) の倍数ではない。
③ \(a=3k+2\), \(b=3l+1\) の時
\begin{eqnarray} ab&=&(3k+2)(3l+1)\\ &=&9kl+3k+6l+2\\ &=&3(3kl+k+2l)+2 \end{eqnarray}\(3kl+k+2l\) は整数より、\(ab\) は \(3\) の倍数ではない。
④ \(a=3k+2\), \(b=3l+2\) の時
\begin{eqnarray} ab&=&(3k+2)(3l+2)\\ &=&9kl+6k+6l+4\\ &=&3(3kl+2k+2l+1)+1 \end{eqnarray}\(3kl+2k+2l+1\) は整数より、\(ab\) は \(3\) の倍数ではない。
①〜④により題意は示された。
解説
対偶にすると、
\(a\) かつ \(b\) は \(3\) の倍数ではない。ならば、積 \(ab\) は \(3\) の倍数ではない。
「\(a\) かつ \(b\) は \(3\) の倍数ではない」を言い換えると、「\(a\) は \(3\) の倍数ではない」かつ「\(b\) は \(3\) の倍数ではない」となる。
\(a\) は \(3\) の倍数ではない ⇨ \(a=3k+1\), \(3k+2\) (\(k\) は整数)
\(b\) は \(3\) の倍数ではない ⇨ \(b=3l+1\), \(3l+2\) (\(l\) は整数)
すべての整数は、\(3k\), \(3k+1\), \(3k+2\) と表されるので、
\(3\) の倍数:\(3k\)
\(3\) の倍数でない:\(3k+1\), \(3k+2\)
以上より、「\(a\) は \(3\) の倍数ではない」かつ「\(b\) は \(3\) の倍数ではない」とは、以下の場合分けを確認すれば良い。
① \(a=3k+1\), \(b=3l+1\)
② \(a=3k+1\), \(b=3l+2\)
③ \(a=3k+2\), \(b=3l+1\)
④ \(a=3k+2\), \(b=3l+2\)
実際に確認してみる。
① \(a=3k+1\), \(b=3l+1\) の時
\begin{eqnarray} ab&=&(3k+1)(3l+1)\\ &=&9kl+3k+3l+1\\ &=&3(3kl+k+l)+1 \end{eqnarray}\(3kl+k+l\) は整数より、\(ab\) は \(3\) の倍数ではない。
② \(a=3k+1\), \(b=3l+2\) の時
\begin{eqnarray} ab&=&(3k+1)(3l+2)\\ &=&9kl+6k+3l+2\\ &=&3(3kl+2k+l)+2 \end{eqnarray}\(3kl+2k+l\) は整数より、\(ab\) は \(3\) の倍数ではない。
③ \(a=3k+2\), \(b=3l+1\) の時
\begin{eqnarray} ab&=&(3k+2)(3l+1)\\ &=&9kl+3k+6l+2\\ &=&3(3kl+k+2l)+2 \end{eqnarray}\(3kl+k+2l\) は整数より、\(ab\) は \(3\) の倍数ではない。
④ \(a=3k+2\), \(b=3l+2\) の時
\begin{eqnarray} ab&=&(3k+2)(3l+2)\\ &=&9kl+6k+6l+4\\ &=&3(3kl+2k+2l+1)+1 \end{eqnarray}\(3kl+2k+2l+1\) は整数より、\(ab\) は \(3\) の倍数ではない。
①〜④により題意は示された。
おわりに
今回は、対偶を用いた証明問題でした。
「どんなときに対偶を使うの?」と迷った場合は、対偶にしていないパターンと対偶にしたパターン両方で計算しみてみるのも一つの手でしょう。
さいごまで読んでいただきありがとうございました!
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