二重根号の外し方
今回は \(2\) 重根号の仕組みと外し方について紹介します。
やり方を覚えてしまえばそれまでですが、理論を知っていれば、その考え方を他の公式や問題にも応用できるようになり、「覚える数学」から抜け出せるきっかけになるかもしれません。
では、実際に見ていきましょう。
二重根号の公式とその導出
(公式)
( i ) \(\sqrt{(a+b)+2\sqrt{ab}}=\sqrt{a}+\sqrt{b}\)
( ii ) \(\sqrt{(a+b)-2\sqrt{ab}}=\sqrt{a}-\sqrt{b}\)
(導出)
( i ) の導出
\((\sqrt{a}+\sqrt{b})^2=a+2\sqrt{ab}+b\)
この等式から、
\(\sqrt{(a+b)+2\sqrt{ab}}=\sqrt{a}+\sqrt{b}\)
が得られる。
二重根号の外し方(問題)
次の式を簡単にしなさい。
(\(1\)) \(\sqrt{8+2\sqrt{15}}\)
(\(2\)) \(\sqrt{3+\sqrt{5}}\)
>>詳細はこちらから
答案の例
(\(1\))
\(\sqrt{8+2\sqrt{15}}\)
\(=\sqrt{5+3+2\sqrt{5 \times 3}}\)
\(=\sqrt{5}+\sqrt{3}\)
(\(2\))
\(\sqrt{3+\sqrt{5}}\)
\(=\sqrt{\displaystyle \frac{6+2\sqrt{5}}{2}}\)
\(=\displaystyle \frac{\sqrt{5}+1}{\sqrt{2}}\)
\(=\displaystyle \frac{\sqrt{10}+\sqrt{2}}{2}\)
解説
(\(1\))
まずは、一般的な \(2\) 重根号の外し方を紹介します。
根号(ルート)というものは、いわゆる \(\displaystyle \frac{1}{2}\) 乗なので、例えば \(\sqrt{3}\)は、 \(3^{\frac{1}{2}}\) ということです。
この性質を使うことで、\(\sqrt{3^2}\) など、根号の中身が \(2\) 乗の形になっているものに関して、根号を外すことができたわけです。
細かな途中式を書くと、
\(\sqrt{3^2}\)
\(=(3^2)^{\frac{1}{2}}\)
\(=3^{(2 \times \frac{1}{2})}\)
\(=3\)
のように計算することができるわけです。
ここで重要な知識は、根号の中身を \(2\) 乗の形で表せば、根号を外すことができる、という事実です。
つまり今回の問題で言えば、 根号の中身である \(8+2\sqrt{15}\) を \(2\) 乗の形で表すことができれば、一番外側の根号を外すことができるということになります。
次に、 \(2\) 乗の形を作り出すためには、
\(x^2+2xy+y^2=(x+y)^2\)
の因数分解の公式を使って式変形を行うことになります。
みなさん、 この因数分解を行うとき、真ん中の \(2xy\) に着目して考え始めませんか?
この項は、 \((x+y)^2\) の \(x\) 、 \(+y\) 、\(2\) の \(3\) つを掛け合わせることによってできていますね。
例えば、 \(x^2+6x+9\) の因数分解をする場合、真ん中の \(6x\) は \(x\) 、 \(3\) 、\(2\) の \(3\) つを掛け合わせてできています。
これにより、 \((x+3)^2\) がでてきますね。
おわかりのように、真ん中の項には \(2\) が確定でかけ算されています。
ルートが入っている問題でも同様に、真ん中の項にあたる \(2\) 倍されている項に着目するのです。
このことを念頭に置きながら、具体的に本問を見ていきましょう。
今回は、\(\sqrt{8+2\sqrt{15}}\) の中にある \(2\) つの項を見ると、どちらも \(2\) が掛けられており、因数分解の際の真ん中の項になる可能性があります。
まず \(8\) が真ん中の項になると考えてみます。
しかし、 \(8\) を \(3\) つのかけ算に分解しても、意味がないことがわかりますでしょうか?
(例えば、 \(2 \times 1\times 4\) のように考えても、 \((1+4)^2\) のように因数分解される?、とよくわからなくなりますね。)
よって、真ん中の項になり得るのは、 \(2\sqrt{15}\) のほうということになります。
この数での分解候補は、
\(2 \times \sqrt{3} \times \sqrt{5}\)
\(2 \times \sqrt{1} \times \sqrt{15}\)
の \(2\) 通りです。
これらを因数分解した形で表そうとすると、
\((\sqrt{3}+\sqrt{5})^2\)
\((\sqrt{1}+\sqrt{15})^2\)
となるので、これらを展開してもとの \(8+2\sqrt{15}\) という式に戻れば、因数分解成功となります。
つまり、\((\sqrt{3}+\sqrt{5})^2\) の因数分解が正解だったということがわかります。
\(2\) 乗すると、\(\sqrt{3}\) と \(\sqrt{5}\) のルートが外れるので、 \(3+2\sqrt{15}+5\) となり、 \(8+2\sqrt{15}\) となりますね。
よって、 \(2\) 重根号の中身が因数分解できたため、
\(\sqrt{8+2\sqrt{15}}\)
\(=\sqrt{(\sqrt{5}+\sqrt{3})^2}\)
\(=\sqrt{5}+\sqrt{3}\)
のように変形し、答えを導くことができるのです。
\(\sqrt{a+2\sqrt{b}}\) の \(2\) 重根号を外すときは、 \(2\sqrt{b}\) に着目し、一番外側のルートの中身を因数分解すると式を整理できる。
まず、 \(2\sqrt{b}=2 \times \sqrt{x} \times \sqrt{y}\) となる \(x\) と \(y\) を探す。
次に、この \(x\) と \(y\) に関して \((\sqrt{x}+\sqrt{y})^2\) を作ってみて、展開して\(a+2\sqrt{b}\) に戻れば、因数分解成功となる。
(\(2\))
こちらも同じように、まずは\(2\sqrt{b}\)となっている項に着目したいのですが、見てわかる通り、\(2\sqrt{b}\)になっている項がありません。
こういう場合、上記の規則性を使える形に式を少し変形する必要があります。
むりやり \(3+\sqrt{5}\) を \(3+2\sqrt{5}\) にしてみます。しかし、この場合もとの式と値が変わってしまうため、\(2\sqrt{5}\) を作りつつ、もとの式と値が変わらないように、うまく式全体を変形しなければなりません。
そこで、全体を \(2\) 倍して \(2\) で割るという手法を取ります。
つまり、 \(3+\sqrt{5}\) を \(2\) 倍して \(6+2\sqrt{5}\) とし、それを \(2\) で割って \(\displaystyle \frac{6+2\sqrt{5}}{2}\) を作るわけです。
こうすれば、もとの式と結果的に値は変わりませんね。かつ、分子を見ると、ちゃんとルートの前に \(2\) が入っています。
\(2\sqrt{b}\) の \(2\) がない場合、式が変わらないようにしながら、むりやり \(2\) を作り出そう
これで式全体を見てみると、
\(\sqrt{\displaystyle \frac{6+2\sqrt{5}}{2}}\)
\(=\displaystyle \frac{\sqrt{6+2\sqrt{5}}}{\sqrt{2}}\)
となるため、分子に関して、(\(1\))と同じように、 \(2\) 重根号を外してみます。
今回の場合、
\(2\sqrt{5}=2 \times \sqrt{5} \times \sqrt{1}\)
しかパターンがないので、 \((\sqrt{5}+\sqrt{1})^2\) を作ります。
念のため展開してみると、
\((\sqrt{5}+\sqrt{1})^2\)
\(=5+2\sqrt{5}+1\)
\(=6+2\sqrt{5}\)
となり、もとの分子に戻りますね。
よって、
\(\displaystyle \frac{\sqrt{6+2\sqrt{5}}}{\sqrt{2}}\)
\(=\displaystyle \frac{\sqrt{(\sqrt{5}+\sqrt{1})^2}}{\sqrt{2}}\)
\(=\displaystyle \frac{\sqrt{5}+\sqrt{1}}{\sqrt{2}}\)
\(=\displaystyle \frac{\sqrt{5}+1}{\sqrt{2}}\)
となり、最後に有理化を行って、\(\displaystyle \frac{\sqrt{10}+\sqrt{2}}{2}\) を導きます。
おわりに
さいごまで読んでいただきありがとうございました!
【最新】こちらの記事がおすすめ!